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2019.05.12

自家消費の5つの課題【社長BLOG】

東京に自然エネルギーの森をつくる・たまエンパワー代表の山川勇一郎です。

今回は少し専門的な内容にフォーカスします。

まず留意すべきは、「自家消費」を話題にするとき、家庭用の太陽光発電と、もう少し大きな設備での太陽光発電と、切り分けて考えるべきということです。今回話題にするのは、家庭用ではなく、もう少し大きな規模の施設の屋根上で発電した電気をFIT売電に頼ることなく自家消費するケースを扱います。

これまでは屋根の下で一定以上の負荷(=電力消費)があっても、FIT制度による全量売電をするケースがほとんどでした。なぜならそちらのほうが儲かったからです。最近は、FITの買取価格の下落に伴い事業性が低下し、むしろ自家消費のほうが「お得」になってきており、「自家消費」がにわかに脚光を浴び始めました。施工事業者もFIT中心のビジネスからの転換を図りつつあるというのが業界の現状です。

では、これから一気に自家消費に移行が進むかといったら、事はそんなに簡単ではありません。ここでは5つの代表的な課題を列記してみたいと思います。

1.負荷パターン問題
自家消費とは、文字通り太陽光で発電した電気を直接消費しますが、太陽光の発電パターンと、建物の負荷パターンが一致するとは限りません。季節や天気はもちろん、平日と休日の違いなどで、インバランスは必ず発生します。太陽光の発電量が負荷を上回った場合、電気は基本的には貯められませんから、その電気は使われずに無駄になります。それだけならまだよいですが、2に記載する逆潮流が不可の場合、厄介な問題が発生することになります。「屋根が広いからたくさん載せて自家消費しよう」というのは極めて危険な発想です。逆に、負荷変動を考慮しすぎるとごく小規模しか載らず、太陽光を付けてもほとんど効果がありません。これを解決するには、負荷パターンを分析した上で、予想発電量と合わせながら余剰率を割り出して、適切な規模を見出すというプロセスが必要となります。
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2.逆潮流問題
自家消費型の太陽光で、発電量が負荷を上回った場合、何も対策をしなければ、系統側に電気が流れるいわゆる「逆潮流」が発生します。施設が6600Vの高圧受電施設の場合、受変電設備を介して系統方向に逆潮流する電気は高圧扱いとなるため、たとえ少量でも電力会社との連系協議が必要となります。その際、地域によっては、電力会社から「逆潮流ゼロ」回答が来るケースがあります。その場合、RPR(逆潮流防止装置)をつけて逆潮流しそうになったら強制的にパワコンを止める措置が必要となります。RPRで強制的にスイッチを切られたパワコンは、およそ180秒後に再起動しますが、その時点で発電量が負荷をオーバーしていたらまた落ちるといった入り切りが頻繁に繰り返されることになります。過剰な設備を設置してしまうと、負荷が少ない3月から5月の晴天の昼間は実質的にほとんど発電しないという問題が発生することになります。こうした問題を考慮に入れて、逆潮流のあり/なし、設備の容量、パワコンの制御回路などを設計する必要があります。
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3.受変電設備接続問題
高圧施設で自家消費する場合は、一般的には受変電設備に接続することになります。高圧の受変電設備の取り扱いは第一種電気工事士の有資格者であることが大前提ですが、受電盤のどこに接続するか、OVGR(地絡防止装置)およびZPD(零相電圧検出装置)をどこにつけるか、それらの復帰方法をどうするか等を含め、専門家が設計をしないと火災等の大事故につながります。また、受変電設備は法律上、電気主任技術者を選任することが義務付けられていますが、盤の改造には主任技術者との協議が必要です。また、受変電設備の接続時は停電作業となるので、外部電源を準備するなども必要となります。そしてこれらの一連の技術と経験を持った人材は限られているため、市井の施工業者では技術的にカバーしきれなかったり、外注すると小規模施設だとコスト高になって採算割れするケースがままあります。
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4.採算性計算の問題
FIT売電は買取価格が決まっているので、採算計算がしやすかったですが、自家消費の場合はそもそもその基準が「現在契約している電力料金」ということになります。電力料金は通常「基本料金+従量料金」に分かれていますが、これらの料金体系も電力会社によって異なるため、採算計算の比較対象がはっきりしていません。従って、ユーザーにとって、自家消費太陽光発電をすると一体どのくらいお得になるのかわかりづらいという課題があります。

5.ファイナンス問題
全量売電の場合は、固定価格買取制度という国の法律に則った20年間の買取保証があるため、お金を貸す側も担保が取りやすく、融資やリースを組みやすかったということがありました。しかし自家消費の場合、FIT制度に則っていないため、工場なら環境変化で工場が閉鎖するリスク、小学校なら人口減で統廃合になるリスク、省エネ設備の更新などで負荷が減少するリスクなど様々なリスクがあり、金融機関側も融資に慎重になるケースが多く、お金が借りにくいという問題があります。そもそも、金融機関の融資担当者に自家消費の知見と実績が不足しているため、十分な事業性を有するケースでもリスク評価ができずにプロジェクトがとん挫するケースもあります。


以上、代表的な課題を列記しました。これらは自家消費を行おうと思った場合に必ず付いて回るものです。

最近、「自家消費を進めたいけれど、適切な事業者が見つからない」という建物所有者や、「お客さまから相談を受けているが対応しきれず困っている」という施工事業者から相談をもらうケースが増えてきています。弊社はこれまでの実績・経験から、これらの課題を踏まえ、最適な設計・設置を提案いたします。(自家消費設計支援サービスの詳細はこちら

FITは再生可能エネルギー100%社会に向けた第1幕に過ぎず、その「次」の世界がもうすぐそこに来ています。その波に乗って、次の社会に向けて力強く進んでいきましょう。