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自家消費の課題⑤「ファイナンス問題」【社長BLOG】
東京に自然エネルギーの森をつくる・たまエンパワー代表の山川です。
今回は自家消費太陽光のファイナンス問題。PPAが注目されていますが、万能ではないですよ、というお話です。
自家消費太陽光は、FITが投資事業という意味合いが強いのと異なり、企業の生産活動に伴うエネルギーコスト削減と環境負荷の低いエネルギーへの転換という点で、企業にとっての経営改善の本流であると言えます。
自家消費太陽光発電を設置する際は、建物オーナーが設備の代金を負担するのが一般的ですが、一定規模の投資が伴うため、意思決定にはそれなりに時間がかかりますし、B/S上で負債が増えることを嫌がられるケースもあります。
そこで昨今は第三者が屋根を借りて太陽光発電設備を設置し、電気代として太陽光発電設備で発電した電気を販売するいわゆるPPA(Power Purchase Agreement)が、第2の選択肢としてクローズアップされており、ここ1年でリース会社、パネルメーカー、電力・ガス会社などが軒並みPPA事業に参入しています。
これは一見「初期投資0円で太陽光発電がつく」と思ってしまいがちですが、事はそんなに簡単ではありません。設置する側のPPA事業者の立場になって考えると、当たり前のことですがどの建物でも設置できるとは限りません。
屋根が重さに耐えられるか(=耐荷重)、防水工事などが必要でないか(=防水)、風に飛ばされないようにしっかり屋根に固定できるか(=耐風圧)、老朽化で太陽光の耐用年数(17年以上)程度は事業継続が可能か、といった要素は、PPAであろうが建物オーナーが設置する場合であろうが、共通の課題です。
ただ、空調機器の更新で著しく消費が減ったり、その建物が移転したり倒産したりするリスクは多かれ少なかれあります。こうしたリスクに対し、大企業に比べて中小企業は信用力に劣るため、業績によってはPPAでの設置を断られるケースもあります。
一方、公共施設は民間より信用力はあるものの、学校などは周辺の向こう15-20年の人口動態が著しく減少する見込みの地域などは廃校になるリスクがあるので注意が必要です。(このようなリスクに備え、PPA事業者側で信用保証会社などと連携したバックアップスキームを組む場合もあります)
つまり、PPA事業者にとって(資金を拠出する側にとって)、投資したお金が返ってこなくなるような事態が最も避けたいわけで、ここが固定価格での買取が保証されているFITと最も異なる点です。
なお、自己設置で金融機関から借入をする場合も、担保や保証なしにプロジェクト単体でファイナンスが付くケースは稀です。金融機関側の担当者の理解が不足しているケースも多いです。そうすると、基本的にはコーポレートの与信に頼らざるを得ないため、資金力に余裕がない中小企業にとって、資金調達の難易度はより高くなります。
こういった事情から、ファイナンスが付きやすい大企業の大型の屋根から自家消費が進んでいるのが現状です。ただ中小企業こそ、安価でクリーンな太陽光発電を導入する必要性は高く、信用補完や利子補給、税制優遇、規模が小さい案件に対する補助金等、政策的な後押しをもっと進めるべきだと思います。
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