Project / TEPの活動

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2015.09.28

なぜ、ホワイトフランチャイズなのか?

私たちは「ホワイトフランチャイズ(=WFC)」という仕組みを活用して、首都圏での再エネ開発を進めています。では、WFCとは一体何なのか、その考えに至った経緯も含め少しお話したいと思います。

2012年から始まった固定価格買取制度(FIT)によって、地方のメガソーラーを中心に太陽光発電が全国に広がりました。しかし、あまりに急速な拡大によって様々な問題も明るみに出て、政府による一連の見直し策によって地方の新規の大規模開発は一段落した形になりました。それを評して「太陽光は死んだ」との声も一部に聞かれますが、地方から都市部に目を向けてみると実は全く異なる景色が見えてきます。168万戸の戸建住宅、62万事業所を抱える東京のエネルギー自給率は水力を除くと0.49%*と極めて少ない一方で、屋根上の太陽光発電のポテンシャルは860万キロワット**(=原発約1基分***)と、依然大きなマーケットが残されています。

この数年間、太陽光のシステム価格は下落する一方で、電気代は上昇を続け、2014年12月には太陽光発電の発電単価が電気料金を一部で下回りました****。これは「電気を買う」より「作って使う」ほうが得な時代に本格的に入ってきたことを意味しています。また、蓄電池の技術の発達により、電気を貯め、必要に応じて出し入れする「自家使用」モデルが世界的にも急速に注目を集めています。

このように変化するエネルギー環境下において、一昔前の全量売電モデル一本ではメリットが出づらくなってきています。そこで、私たちは、自家使用をベースに太陽光発電と蓄電池と防災教育プログラムによる小規模施設向けのパッケージ「エネフローラ」を開発、首都圏の屋根上での展開の素地を整えてきました。

その際、地域の組織や企業や個人が主体となることが、長い目で見て地域経済や、地域全体を活性化していくという考えに立ち、地域の事業者が主役になり、かつ面的に拡大する取り組みができないか検討を重ねた結果、首都圏各地の地域の電気工事店及び、地域で活動するご当地電力やリフォーム会社などとパートナーシップを結び、首都圏各地に地域主導の再エネの面的拡大を図るという結論に至りました。

ご当地電力などの販売パートナー(=SP)は地域でのネットワークを活かして案件開発を図り、電気施工店などの施工パートナー(=CP)は物件の施工・管理を担います。そして、たまエンパワーは黒子役として、営業・技術・ファイナンス・機器仕入・防災教育プログラムといった支援を担い、それぞれのパートナーがオープンでフェアな関係性の元、役割分担をして地域展開をして共存・共栄を図る、このような仕組みを「ホワイトフランチャイズ」と命名しました。

SPにとっては、信頼できる施工店と保守体制、教育など、自分たち実現できないことがこの仕組みを活用することで補うことができ、必要に応じて営業・技術・ファイナンスの支援も受けられます。また、施工店の多くは機器の調達力や営業余力が不足していることから、CPにとっては、品質の良い機器を安価に調達でき、SPによる案件紹介というメリットがあります。

フランチャイズと聞くと、フランチャイザー(本部)とフランチャイジー(加盟店)のヒエラルキーと搾取の構造を思い浮かべる方もいるようですが、WFCはむしろそうしたことへのアンチテーゼとして生まれたと言えます。私たちは、白いキャンパスを単色で染めるようなことは望んでいません。SP・CPそれぞれが地域で異なる色を出しながら地域の建物オーナーと関係を築き、その中で、絵具や筆といった道具(ツール・仕組み)は共有するので、うまく活用して下さいという考えを予めお話ししています。そうした考えに共感してくださった企業・団体にパートナーになっていただいています。これを年度末までには3倍に増やしていきたいと考えています。

SPは、現在首都圏で市民発電所を展開するご当地電力であったり、リフォーム会社であったり、ウッドデッキの施工販売を行う会社であったりします。SPは成約案件に対して一定の販売マージンを設定していますが、顧客やテリトリーが重なる業種にとっては本業を行いながら無理なく展開できるビジネスの一つの選択肢になるでしょう。そういった意味では、リフォーム業やガス・水道・清掃・ビル管理など、既に施設管理者との接点を持っている業種などの相性が良いかもしれません。

WFCはあくまで地域主導で面的展開を図るための道具に過ぎません。

私たちがその先に目指しているものは地域が主体となって作る再エネ100%地域です。東京でこれを実現するのは夢物語と思う人がほとんどだと思いますが、私は決して実現不可能ではないと思っています。その第一歩としてWFCがあるのです。

WFCに関するお問い合わせ
WFCパートナー
*環境省 平成24年度再生可能エネルギーに関するゾーニング基礎情報整備報告書
**千葉大学倉坂研究室「永続地帯2014年度版報告書(確報版)」 
***原発1基=100万キロワット/太陽光の設備利用率12%と仮定 *≒103万キロワット
****自然エネルギー財団 自然エネルギーアップデート(2015年7月30日)