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2019.03.10

2019年問題の本質は何か?【社長BLOG】

東京に自然エネルギーの森をつくる・たまエンパワー㈱代表の山川です。今回のテーマは「2019年問題」です。

「2019年問題」は、すごくざっくりいうと、家庭用の余剰電力買取期間10年ですが、買取契約終了後に「そのまま何もしないと余った電気の買取先がないまま宙に浮いてしまう、どうしよう?」問題です。最初のFIT卒業生が2019年なので、「2019年問題」と言われています。その数実に40万世帯!その後年間20~25万世帯ペースで「FIT卒業生」が出てくると言われています。

業界的はこれを商機とみて、「蓄電池を入れましょう!」「パワコンを交換しましょう!」「余剰電力を買い取ります!!」と色めき立っています。上記の動きは多少過熱気味であるものの、経済の大原則として、ある程度モノが売れないと事業者は商売が継続できませんし、業界自体も大きくなりません。そして、競争することでサービスの質は上がっていくので、むしろ歓迎されることだと僕は思っています。

太陽光ユーザーにとっては、今まで1kWあたり48円/kWh(2009年度)で東京電力に買い取ってもらっていたものが、放っておいたらゼロ円になってしまうので、これは一大事です。
屋根の上に5kWの太陽光発電を設置していてそのうち60%(3,000kWh/年)売電していたと仮定すると、今までの売電収入は年間15万円近くになります。従って、「蓄電池を入れると自家消費率が上がって災害時にも安心ですよ」とか、「うち(新電力)は10円/kWで買い取りますよ。他よりお得ですよ!」とか、事業者はユーザーに訴求します。そこは利害が一致しています。

しかし、ぶっちゃけ太陽光発電のユーザー以外にはあまり関係のない話ですよね。。
一部の太陽光ユーザーと業界のみが盛り上がっている、それが今の2019年問題の構図です。
しかし、本当に私たちに関係のない話なのでしょうか?

ここで考えてみたいのは、「FIT制度からの卒業」が、社会的にどういう意味を持つのか?その先にどういう社会が待っているのか?ということです。

ここで、少し思考をジャンプさせて2030年頃の日本の電力システムを考えてみましょう。

前回、「電気は貯められない」「使う分だけ作って送る」という「同時同量原則」について書きました。需要と供給をバランスさせると口で言うのは簡単ですが、そのためには、いつどこでどのくらい電気が使われているのか正確に把握しなくてはなりません。系統から購入する電気は原則全て電力メーターが回ります。全てがスマートメーターで、電力データが全て集約できたと仮定すると、供給量をリアルタイムで把握することは理論上には可能です。しかし実際はアナログメーターもまだ相当数残っています。更に、屋根につけた太陽光発電の電気は、まず宅内で消費され、余ったものだけ系統に「逆流」し、足りない場合は系統から「流れて」きます。差引分だけメーターが正逆方向のどちらかに回るため、実際どのくらい需要があるかは現状では正確に把握できません。

そんな中でも停電しないのは、「これだけ送っていれば過去の経験上まず足りなくならないだろう、というざっくりとした予測の下で、電力会社が電気を系統に流し込んでいる。」からです。当然、無駄も多い(はず)。これが2019年現在の日本の電力システムです。

しかし仮に、電気製品や太陽光発電やEVなど、電気を作ったり消費するすべての機器がネットワークでつながってリアルタイムでデータのやり取りができれば、需要は正確に把握できますよね。こうした動きは3年5年で急速に進むでしょう。いわゆるIoT(Internet of Things)化です。これらの機能を備えたお家は俗に「スマートハウス」と呼ばれています。
スマートハウス.png

更に「今、この地域で電気が足りていないので、あなたの太陽光の電気を分けて送ってください」とか、「エアコンを強から弱にしてね」とか機器を遠隔でコントロールすることで電力の凹凸をならすことができます。そうすれば今まで系統の上流側で無駄に動かしていた発電所の稼働を止めることができ、電力の無駄が軽減されます。

このように電気の需要地に散らばった無数の機器をネットワークでつないでコントロールすることで、あたかも一つの大きな発電所が新しくできたような意味を持たせることができます。それがVPP(バーチャル・パワー・プラント)です。
VPP.png

HEMS(ホーム・エネルギー・マネジメント・システム)とよばれる機械は、今は電気の見える化機能が主ですが、将来的には文字通り電力制御を行う中心的な役割を担うようになるでしょう。

ここで重要なのが「未来の需要予測」です。これらは人間よりAIの方が明らかに優れています。電力消費は天気との相関性が高いので、精度の高い気象予測も不可欠です。AIが電力消費パターンと気象パターンを学ぶことで、未来の需要予測の精度はどんどん高まるでしょう。

更に、例えば、自分の家は昼に子ども含めて3人が暮らしていて、おとなりのおじいちゃんの家に太陽光がついていて、ほとんど電気を使っていないとき、しょうゆのおすそ分けみたいに「ちょっと電気貸してくれませんか?」みたいなことも2030年には可能になるでしょう。
ただそのためには、電気がいつどこでどのくらい発電されてどこに送られてどこで使われたということの履歴を取る必要があり、それはブロックチェーン技術によって可能になります。電力価格は日夜変動しますので、そうして個人間でやり取りされる電力に自動的に値段がついて自動的に決済されれば、電気が安く作って高い時に電気を売るといった株のデイトレードみたいなことも可能になるでしょう。

と、ここまでくれば、何となく予想はつくと思います。
FITを卒業した電気は、クリーンかつ投資回収の終わった「安価」な電気ですから、ユーザーとしても、社会的にも、非常に価値のある資源です。昼に発電した電気を蓄電池に貯めて夕方使えば、高い時間帯の電気を買わずに済みます。加えて災害時も使えるので、安心感が増します。

ただその先には、お家の機器がすべてネットワークにつながることで、電力の自由な売り買いだとかいろんなことができるようになり、電力の無駄が劇的に減り、結果的に化石燃料由来の発電所を動かさずに済む、そうした社会は実はもうすぐそこまで来ています。

そのような未来社会の発端が、余剰買取制度を卒業した太陽光発電なのです。
これら太陽光発電を設置しているお家は実は次の社会の実験場なのだと僕は思います。
そして今は当事者でない方も、将来お家を建てる時や、車の買替の時などに、太陽光発電やEVや蓄電池を導入することで次の社会づくりに参加できる、そんな視点を持ってもらえたらうれしいです。

最後に少し宣伝を・・・上記のような話を含め、実際「2019年問題ってどうなの?」「蓄電池を入れるとしたらどんなものがいいの?」「どこにお願いすればいいの?」というような疑問に答える「2019年問題講演会」を実施しています。
詳しくお聞きしたい方はこちらからご相談ください。