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「FIT法改正と太陽光の未来」【社長BLOG】
東京に自然エネルギーの森をつくる・たまエンパワー代表の山川勇一郎です。
久しぶりに投稿です。
現在、FIT法改正の議論が進行していますね。
先日、事業用太陽光の来年度以降の新規認定は終了し、従来の10kW以下の余剰売電に集約される見込みとの報道がされました。実際は、改正FIT法の抜本的見直しは2019年度中に行われる予定でしたので、この議論は春から本格的に始まっており、このタイミングでの報道に特に驚きはありません。
そもそもFITは市場形成初期段階の時限的な制度であり、市場が成熟するに従って、FITから「卒業」し、業界としての自立を目指すのが政策的に正しい方向です。再エネが適正な価格で補助金等に頼らずに普及するようになれば、分散型エネルギー社会の基幹電源として有力な存在になるでしょう。
しかし、単に「自立せよ。」といっても、低圧の事業用太陽光(10-50kW)において、地方の雑種地・山林、耕作放棄を含む農地、都市部の屋根、都市部の遊休地など、ロケーションによって条件は全く異なり、事はそんなに簡単ではありません。
まず、建物の屋根のように同一敷地内に負荷がある場合は、自家消費への移行が妥当でしょう。現在、建物所有者が投資する以外に、第三者が所有して屋根下に電気を売るいわゆるPPAモデルが注目されています。ただ、本ブログでも再三指摘しているように、高圧受電施設におけるいくつかの課題をクリアしないと価格も思うように下がらないし、爆発的な普及も望めないでしょう。
また、都市部の遊休地など、隣接した土地に負荷がある場合、土地をまたいで自営線で接続する、複数の土地を束ねて一括受電する等、自家消費の延長としての自営線供給、マイクログリッドを形成する動きも今後出てくるでしょう。これらを進めるには特定供給や自己託送などの既存の制度を含め、改めて法整備が必要となるでしょう。
地方の雑種地や山林などでの野立ての太陽光は業界の努力によって価格低下が進んでいます。仮に7円/kWh程度で発電できれば、託送料などを含めても十分に競争力を持つ電源になります。現在はメガクラスが中心であるものの、オフサイトのNon-FITの野立て太陽光発電から環境価値付きの電気を事業所に供給するという事例も出てきており、RE100を目指す企業などを中心に、今後需要が高まることが予想されます。
農地に関しては、農地法の制約があり当初はほとんど手つかずだったものの、数年前から下部での営農を前提に柱部分だけ一時転用して上部を太陽光発電として使用する「ソーラーシェアリング」と取り組みが普及しています。しかし、架台の高さと強度が求められるため、野立て同様の低価格での施工は現実的には困難で、Non-FITでの発電所の普及は余程工夫しないと難しいでしょう。ただ、耕作放棄地対策や農業者の所得向上対策には毎年多額の予算が投入されています。これらの課題を同時に解決する試みは、通常のFITとは別に政策的後押しをすべきだと思います。
このように、一口に「50kW以下の事業用太陽光」と言っても、規模だけで一括りにできないと言うのが理解できると思います。
弊社は創業当初から屋根上の太陽光の自家消費には取り組んできましたが、実際屋根上に設置できる規模にはやはり限界があります。
脱炭素社会構築に向けて、地域や環境との調和を図りつつ、屋根以外の場所にも可能な限り再エネを導入していくべきだと思います。
資源エネ庁、環境省などの中央官庁や地方公共団体、業界団体などでもFIT後のエネルギー社会のあり方から逆算した法改正、新たなビジネスモデルについての議論が活発化しています。
FITという飛び道具を使い、急速に社会に広がったことから、最近とかく負の側面がクローズアップされがちな太陽光発電ですが、他の電源と比較しても極めて低廉で安全で使い勝手のいい電源であると断言できます。
業界人として、そうした事実をしっかり発信しつつ、各種政策や規制緩和については必要な要望を行い、普及のために現場で汗をかいていきたいと思います。