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2019.02.24

私たちの電気代の中身はどうなっているのか?【社長BLOG】

東京に自然エネルギーの森をつくる・たまエンパワー代表の山川です。
今回のテーマは私たちが使う電気代の「中身」の話です。

電気は現代の私たちの生活になくてはならないものですが、普段はほとんど意識せずに使っているので、どこからどうやってきて、どんな仕組みになっているのか、一般市民が考えることはほとんどありませんよね。考えているとしたら、あなたは相当な通です(笑)

再生可能エネルギーは、電力システムあるいは社会システムそのものを変えてしまうほどのインパクトがあります。その話はまた別の機会に譲りますが、その本質を理解するには、電力の歴史や仕組み、法制度などを紐解いていく必要があります。それらを解説していきたいと思います。

まず、電気も他の商売と同様、商品である"電気"を「作って、届けて、売る」ことで成り立っています。
現在に至る日本の電力システムの基礎がつくられたのは戦後です。それが段階的に自由化されてきましたが、本格的な競争の夜明け前というのが日本の電力システムの現在地です。(※下図参照)
電力システムの仕組み.png

電気はよく川の流れに例えられますが、高いところから低いところに向かって流れていきます。
電気の流れ1.png
大規模な発電所で作られた電気は超高圧(50万~27.5万ボルト)の高圧線で運ばれ、いくつかの変電所を経て、末端の需要地に届けられます。一般家庭は、電柱上に乗っかった筒のような変圧器で最後に100~200ボルト(=低圧)になりますが、それよりやや大きな施設(6,600ボルト=高圧)、大規模な工場(2.2万ボルト=特別高圧)等は、その手前で電気が供給されます。2.2万ボルト以下を「配電網」、それ以上は「送電網」と区分され、合わせて「送配電網」と呼ばれます。普段ほぼ意識せずに使っている電気は、このような仕組みによって私たちの手元に絶え間なく届いています。

日本が戦後復興で産業を新たに興す時、安くて品質の良い電気が大量に必要になりました。そこで、日本を9つのブロックに分け(その後沖縄が加わり10になる)、「安定供給」を第一に、「発電」「送配電」「小売」すべてを行う電力会社が地域ごとに作られ、地域独占の中、発電所や送配電網などの電力インフラ整備と電力供給がされてきました。
そして私たちの支払う電気料金は、電気事業法の下、「総括原価方式」と呼ばれる制度で定められてきました。

総括原価方式は、簡単に言うと、電気を発電して届けるまでにかかった総原価に基づき、電気料金を決められるという制度です。

総原価の中には、燃料費、人件費、減価償却費など様々な経費が含まれます。「燃料費」はいわゆる「仕入」で、総原価の40%以上を占めています。但し、燃料は常に変動するため、その価格変動を「燃料調整費」として外に出して±して良いことになっています(下図)
総括原価方式費用内訳.png (資源エネルギー庁ウェブサイト)

総括原価方式の大きな特徴は、原価に一定の報酬を乗せて総原価とし、それに基づいて電気料金を決められることです。つまり確実に利益が出ます。一般的な商売の感覚から言うとすごい制度ですよね。ただこのことで現在のほぼ停電しない安定した高品質の電気が全国くまなく行き渡るようになったということも事実です。


ただ、地域独占で、価格も自由に決められるわけですから、価格低下やサービスの質が劇的に向上することは望めないことは明らかです。「公正な競争を促す」観点で、国主導で「電力システム改革」が進められ、小売は2000年から規模の大きなものから段階的に自由化が進めらてきました。現在「新電力」と呼ばれる電力小売会社は2018年末時点で550社、シェアは全体の約14%になっています。その中には東京ガスのような大手から、「地域で作った電気を地域で売る」という電力の地産地消や地方創生を企図した「地域新電力」も各地で生まれています。弊社の関連会社であるめぐるでんきもそれにあたります。

一連の電力システム改革の中で、従来の電力会社は「発電」「送配電」「小売」の3つに分社化され、費用も総括原価方式から下記のような形で変更されました。
総括原価方式費用内訳2.png(資源エネルギー庁ウェブサイト)

新電力のような小売電気事業者は、まず、事業者の裁量で選択した電源を仕入れます。加えて送配電会社に「託送料金」を支払います。託送料金とは、送配電線を使用した分だけかかってくるもので、いわば高速道路料金のようなものです。そこに各種税金と再生可能エネルギー賦課金、燃料調整費を乗せて電気料金を設定して販売します。

電気は無色透明なので、農作物等と違って差別化しづらい商材ですが、事業者ごとに「電源構成」は開示され、再生可能エネルギー比率を高めたり、他のサービスとセット販売したりと、各社様々な工夫がされています。

ただ、既存の電力会社は、分社化したものの、持ち株会社の下で連結対象となっており、小売のシェアは10電力で全体の86%、電源調達力にも歴然とした差があり、「公正な競争」という観点で言うとまだまだ大きな課題があります。

ただ、一つ重要な視点があります。お気づきの人もいるかもしれませんが、これまで見てきた日本の電力システムは大規模な発電所から送配電線を通じて消費者に一方的に届けるといういわば中央集権的なシステムでした。これは火力発電のような発電形態には向いていますが、再生可能エネルギーのような下流側に無数に点在する小さな発電所には不向きなシステムです。
今は制度的にも、技術的にもまだ追い付いていない部分がありますが、ここに大きな可能性があります。続きは次回。