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中学生でもわかる電気のしくみ【社長BLOG】
こんにちは。東京に自然エネルギーの森をつくる・たまエンパワー㈱代表の山川です。
今回は、電気の特徴についてお話したいと思います。
ただ、特徴といっても、「ワットとかボルトとか、実はよくわからない。」という人は大人でも多いのではないでしょうか。
じつのところ私も、今でこそ電気の世界にどっぷり浸かっていますが、基本的に文系脳なので、物理学は正直苦手です。ただ、大体の仕組みを知るには中学校レベルの物理の知識でじゅうぶんです。
前回も触れたように、日本ではたくさんの電気が昼夜とわず使われていますが、電気はどこかの発電所で作られ、電線を通って途切れることなくなく私たちのもとにやってきています。それが一瞬でも不足すると停電になってしまいますが、日本の停電率は実に0.16回/年です。(2013年度実績・電事連調べ)「一瞬たりとも停電しない」状態がこの水準で維持されているのは、よく考えるとすごいことだと思います。
(NTTファシリティーズウェブサイト https://www.denki-annai.com/ntt-f/column/20161208_06)
「電力」の単位はW(ワット)とかkW(キロワット)で表します。「電力」とは、文字どおり「電気のチカラ」ですが、1kWが1時間継続した時の電力"量"をkWh(キロワットアワー)で表します。
例えば、100Wの電球を10時間点灯し続けたら100W×10時間=1,000Wh=1kWhの消費ということになります。kWとkWhの違いは知っているようで実は知らない人が多いのでぜひこの機会に覚えてくださいね。
なお、計算式で表すと、W(ワット:電力)=A(アンペア:電流)×V(ボルト:電圧)で求められます。これは中学で習いましたね。
一般家庭は交流100Vで電気を引き込んでいますので、30Aの契約なら、30A×100V=3,000W=3kWが「契約電力」になります。
そして建物で電気を使う場合、瞬間的な電力消費のことを「デマンド」と呼びます。
仮に出力1,500Wの電子レンジと、1,200Wのホットプレートと800Wのドライヤーを同時につかった場合、デマンドは合計で3,500W=3.5kWとなり、デマンドが契約電力をオーバーしてしまうので、ブレーカーが落ちてしまいます。(力率などの説明は今回は省きます)
少し大きな施設だと一般家庭と少し異なります。
電線(送配電網)から6,600V(高圧)で敷地内に引き込まれた電気は、敷地の中の四角いハコの中に入っている変圧器で100Vや200Vに減圧されて、施設に送り込まれます。
契約電力は家庭と違い、過去1年間の最大のデマンドで決まります。
夏のくそ暑い昼間にエアコンをフルパワーでつけたりする時はデマンド越えに要注意です。冬のくそ寒いときに暖房をガンガン炊いている時も同じです。
電気をたくさん使って最大デマンドが過去の最大値をオーバーしてしまった時、そのデマンドで基本料金が決まり、それを1年間払い続けないといけません。ですので、デマンドが超えそうになったらアラームをしつこく鳴らして空調を手動で切ったり、自動でコントロールをしたりして、デマンドを超えないように施設ごとに色々工夫しています。
一方、電気の販売会社(小売電気事業者)は、電気を発電所や市場から仕入れて、タイムリーにお客さん(需要家)に供給しています。必要な量の電気を必要なだけ送る。これを「同時同量」と呼びます。電力自由化前は、東京電力などの電力会社がそれぞれのエリア全体の電力消費に対して瞬間瞬間で同時同量を行ってきましたが、2016年の小売電力全面自由化以降、「計画値同時同量」として30分単位で計画したものを実際の需要とマッチさせる方法がとられています。
では、予想に以上に電気を使ってデマンドをオーバーしてしまったら停電してしまうのでしょうか。しませんよね。それはなぜでしょう?
これは、電気の販売会社が送電会社から足りない電気を補ってもらえるような契約を個別にしているからです。ただその分の電気の仕入価格は高くなります。そして30分値でデマンドを超えた場合に、送電会社から「インバランス」と呼ばれるペナルティ料金の請求を受けます。当然、販売会社の収益は圧迫されますから、できるだけインバランスを出さないように運用する必要があるわけですが、お客さん側もデマンドオーバーは基本料金のアップという形で跳ね返ってくるわけです。ただこれは大きな施設に限ってのことで、一般家庭にはそういう制度はありません。
いずれにしても、これらは「電気は貯められない」という特徴に基づいた「同時同量」の原則から来ています。
ここまで電気そのものの特徴と、それにもとづく同時同量の原則など、電力システムの仕組みについて話してきました。理解いただけましたでしょうか?このあたりを押さえてもらえれば、その先の世界が理解しやすくなります。
これまでの日本は、大きな火力発電所や原子力発電所をもとにした中央集権型の電力システムをつくってきました。昔はインターネットも再生可能エネルギーも蓄電池もありませんでしたが、今これらの技術革新によって、電力システムが大きく変わろうとしています。
例えば、お客さん側にたくさん散らばる太陽光発電や蓄電池やEVなどをネットワークでつないで、あたかも一つの発電所のように電力を融通する「バーチャル・パワー・プラント」や、せまい範囲で自分たちで電線を引っ張り、その中で電気を融通しあう「マイクログリッド」や、ブロックチェーン技術を使った再生可能エネルギーのトラッキングなどがそれにあたります。
最後の話は応用編なので、このあたりの話はまたの機会にゆずりましょう。
次回は、今話題の「太陽光の2019年問題とは何が問題なのか?」についてふれたいと思います。
今日はこのへんで。