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2024.03.11

13年目の3.11に寄せて(寄稿)

今日で3.11から13年目を迎えます。
こうして書くのはひさしぶりですが、せっかくなので私の個人的な話をさせてもらいます。

13年前の今日、私は仕事先の熱海のホテルにいました。その日の仕事を昼過ぎに終え、その夜は、当時仕事の傍ら通っていた大学院で、2足の草鞋を履く社会人学生のグループ「わらじーず」の面々が合流してホテルで合宿をする予定でした。彼らの到着を待つだけとなっていた時、地震が起きました。岬の突端にある船の形を模したホテルが、文字通り船のように揺れ、今まで体験したことのない揺れに、大地震だと直感しました。
その後、事態が明らかになるにつれ東北でとんでもないことが起きたとわかり、電車はストップして合宿はあえなくキャンセルになり、一人ホテルに残された私を不憫に思ったのか、ホテルの支配人が夕食に付き合ってくれて、男2人でその夜を過ごしました。

その後、エネルギー問題が頭から離れなくなった私は、悩んだ末に2年後に会社を退職、地元多摩にUターンして、父が立ち上げた地域電力に参画し、屋根上太陽光発電開発の現場のプロジェクトマネージャーを2年間やったのちに独立。その後、農業法人を立ち上げ、ソーラーシェアリング事業に参入、昨年、本格的にブルーベリー農園を開園して現在に至ります。この11年間、無我夢中で駆け抜けてきました。その間に2人の子どもは幼稚園から高校生になりました。80を超える父とはまだ一緒に仕事をやっていますが、家業ではない事業を2人3脚でやるのは世の中でも稀なケースで、ちょっとした誇りだと思っています。

電気のことも、電力ビジネスのことも、農業も、全くの素人で、文字通りゼロスタートでした。無謀なチャレンジと言われれば、そうかもしれませんね。当然、その分野に入れば、経験を積まないとプロとして認めてもらえません。つど猛勉強をして、知識と経験を積むという作業の連続でしたが、ここで来れたのは、ひとえに周りの仲間に恵まれたおかげだと思います。スタッフ、同業者、取引先、顧客、地域の方など、素晴らしい出会いがたくさんあり、今の自分があります。

そんな自分が一貫して思っていることは「エネルギーを通じたまちづくり」ということです。その点では、ほかの同業者とそもそも異なる視座に立っていたと言えるかもしれません。つまり、エネルギーは手段であり、目的ではない、ということです。

電気の世界も、農業の世界も、どの世界でもそうですが、それぞれ奥深く、その道の専門家がいます。ただ、ともすると専門性を高めるあまり、業界の井戸の中に埋没し、周りが見えなくなってしまいます。すると、技術や知識におぼれ、一体何のためにやっているのかを見失ってしまいます。ビジネスも、利益を上げること自体が目的化すると、環境や地域などの弊害が見えなくなります。その結果が、今のエネルギーを巡る混沌の一つの原因であると感じています。

会社という箱は何のためにあるのか?自分たちのスキルや経験を社会にどう生かすのか?
業界に埋没せず、常に業界と業界の境目の不安定な場所に立ち続けてきたからこそ、見える景色や、できることがあると感じています。

SDGsも最近でこそ一般的な用語となってきましたが、目指していることや考え方は私がこれまでの仕事人生で実践してきたことと全く一緒です。ようやくそういう時代になったと感じています。喜ばしいことだとは思いますが、頭で理解することと、行動することには大きな隔たりがあります。SDGsの理念を実現するのは簡単ではないな、と改めて感じています。

一昨年、わが社のミッションを「私たちは食とエネルギーを通じて自然と調和した地域の未来を創ります」に改訂しました。
これは、農業もエネルギー事業も手段であり、それらに取り組むことを通じて「自然と調和した地域の未来」を創ることを目指すという私たちなりの覚悟であり、意志表明です。

もうすぐ6年目を迎える相模原でのソーラーシェアリングの事業は、個人・法人会員との連携がだんだん深まり、新たなフェーズを迎えようとしています。

向こう3年でやっていきたいのは、地域共生型のソーラーシェアリングの横展開です。
次の時代にふさわしい、エネルギー事業、農業、地域ビジネスの形を世の中に示すことで、社会に貢献していきたいと思っています。

今後ともよろしくお願いします。

たまエンパワー株式会社
代表取締役社長 山川 勇一郎

(写真:日経コンストラクション)