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2020.02.09

太陽光発電所の「質」について【社長BLOG】

東京で自然エネルギーの森をつくる・たまエンパワー代表の山川です。

今回は太陽光発電所の「質」について言及してみたいと思います。

2012年にFIT制度が施行後、全国に大小さまざまな太陽光発電所が建設されました。
ただ、太陽光発電所と一口で言っても、それらの「質」は実は雲泥の差があります。

森林を皆伐したり、急斜面に建てられたり「立地条件」に問題があるもの、基礎が不十分だったり、排水設計がずさんで土砂が流出したり「土木」的に問題があるもの、ケーブルの取り回しや雨仕舞、直列・並列の設計など「電気」的に問題があるもの、パネルメーカーの選定など「機器」そのものに問題があるもの、草に覆われているなど「管理」に問題があるものなど、様々な問題があります。

それらは時間の経過とともに問題が顕在化し、事故を引き起こすリスクが高いと言えます。発電所の立地地域の人たちが太陽光発電に対して不安やネガティブな感情を持つのも無理はないと思います。

しかし、それらを以って、太陽光発電自体がダメだということではありません

太陽光発電はあまねく降り注ぐ太陽エネルギーを有効活用し、電気に変えることで化石燃料の輸入を減らし、地球温暖化を抑制する大きな可能性をもつ優良な技術です。つまりはどう作りどう運用するか「使い方」の問題だと言えます。実際、志と技術力を持った施工業者が作った良質な太陽光発電所は数多く存在します。

弊社では、資源エネルギー庁の調査事業の一環で、質の高い発電所を適正な価格で建設し、効率的に運用していくための知恵を全国の優良な施工業者からヒアリングしています。現在約40社の経営者または施工責任者クラスの方からお話を聞いていますが、非常に有益な知見が数多くあります。

例えば、地面設置の発電所の基礎材として一般的に使用される「スクリュー杭」について、ある施工業者の話では、杭をねじ込む際にフランジが脱落したことをきっかけに調査したところ、杭とフランジの溶接部分の亜鉛メッキ不良が原因で、納入段階で既に錆びているものが多数見つかったそうです。
防錆加工として一般的な亜鉛めっきは、液状のプールにいわゆる「どぶ漬け」が一般的です。本ケースでは、どぶ漬けの際、中空の杭とフランジの溶接部の内側に空気が溜まり、それが原因でめっき不良が起き、その後輸送途中に潮風などに当たって錆びたと予想されます。

杭とフランジの溶接部は基礎の強度を保つ中核部分なので、ここが錆びて強度が落ちると当然、風圧や積雪に耐えられずに崩壊するリスクが高くなります。その事業者では、問題発見後スコープカメラを導入し、杭の内側を1本1本検品することを徹底しているそうですが、他の発電所にも共通するリスクと言えるでしょう。私もそれを聞いて、早速スコープカメラを購入し、自社の発電所の杭を全数チェックするようにしています。

これは、発電所の強度低下リスクを事前に摘み取ることで、発電所の寿命を延ばし、中長期的に修繕コストを抑制する一つの方法と言えます。この他にも施工業者毎に様々な工夫がされていますが、このような有用な知見は業界内にも周知されていません。今回の調査結果は報告書として公開される予定ですので、ぜひこれらの知見を元に健全な発電所が増えていくことを望みます。

今後、発電所のセカンダリ市場(中古発電所の売買)が活性化すると予想されていますが、発電所のデューデリジェンス(査定)面でも、発電量がシミュレーション通りに出ているかという点だけではなく、上記のような「隠れたリスク」をいかに顕在化させるか、といった専門的な知見が求められます。

「安かろう悪かろう」ではなく、「安くていいもの」を建設し、効率的に運用していくことが今後益々求められます。なお、低質な発電所をどのように発見し、どう是正するかはここでは語り切れないので別の機会に譲りましょう。