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2019.04.07

電力小売、So What?【社長BLOG】

東京に自然エネルギーの森をつくる・たまエンパワー代表山川です。

今日は弊社が深くかかわる電力小売事業者の「めぐるでんき」について書いてみたいと思います。

めぐるでんき株式会社は東京では珍しい「地域新電力」として、2017年8月に東京都板橋区で創業をしました。創業に当たり、弊社は20%の株式に出資し、私も取締役として参画、今日まで経営に携わっています。従って、私個人は両方の立場があり、場面によって使い分けていますが、実際はそんなに厳密に切り分けられるわけでなく、どちらも「主体的に」関わっています。

よく「多摩と板橋とどう関係があるのですか?」という質問を受けますが、地域という意味では両者に特別な関係があるわけではありません。ただ、弊社のビジョンは東京でのエネルギーの地産地消で、めぐるでんきのビジョンにも自然エネルギー100%の実現を掲げていますので、大きな意味でつながっています。

弊社の創業時、発電事業の次の展開として小売は選択肢の一つとして頭にはありましたが、自社内に小売のノウハウはありませんでした。ただ、様々ないきさつで板橋在住の現社長の渡部さんと現取締役の藤井さん、その他地域の同世代の異分野のキーパーソンとの出会い、また事業を始めるのに適したいくつかの条件が揃ったこともあり、東京板橋区での創業に参画することになりました。
(ただ、将来的には多摩でも何らかの形で実現したいと思っています)
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実際の事業運営上は、弊社とめぐるでんきは提携関係にあり、創業間もないめぐるでんきの発電事業のリソースの不足を弊社で補いつつ、小売部分は電力小売業に詳しい渡部さんが中心的に担い、一級建築士の藤井さんが省エネ部分を担いという形で分業しながら、エネルギーの「地産地消」を実現していこうとしています。

さて、電力小売についてですが、電力小売事業者(いわゆる新電力)は現在全国に約589社あります(2019年3月31日現在)。電力小売市場は約15兆円で、新電力のシェアは14.6%(電力調査統計・資源エネルギー庁 2018年12月現在)、その中で地域性を持ったいわゆる「地域新電力」と呼ばれる事業者はまだまだマイノリティ的存在です。
ガリバーである東京電力は、分社化して東京電力エナジーパートナーという小売会社を持っており、"制度上"は同じ土俵で戦う競合他社という位置づけになりますが、力の差は誰が見ても明らかです。

電力小売はマーケットのパイは大きいものの、利益率は5%程度と典型的に薄利多売のビジネスです。ただエネルギーを使わないで生活する人はほぼいませんから、一度契約をすると引っ越しや建物の取り壊しや電力会社の乗り換えがない限りは、電気代をずっと支払い続けますので、一定以上の規模が確保できれば安定したビジネスといえます。


では、そんな電力小売ビジネスにローカルベンチャーが新規参入する意義とはどこにあるのでしょう?

結論から言ってしまえば、めぐるでんきは電力小売を「手段」と捉えています

何の手段かと言うと、「よりよい地域をつくるため」の手段です。
めぐるでんきが考えるよりよい地域とは何か?
それは、端的に言うと、多様な人が、ありのままの自分で居れて、地域で暮らしてよかったと思える地域です。
めぐるでんきはそれを多様共生型社会・インクルーシブ社会などと呼んでいます。

例えば、自分の子どもに障害があったとしましょう。障害を持った人を身近に持つ方は実感されていると思いますが、社会には様々なバリアがあります。学校はどうか、専門機関はあるか、住民の理解は...心配は絶えません。

ただ、地域に同じような悩みをもつ人たちが気軽に語り合える場があったらどうでしょう。
あるいは、そこに障害を持たない人たちも気軽に参加ができて、主体的に解決していこうとするあたたかいコミュニティがあったら、どんなに心強いでしょう。
そこにはプライスレスの価値があるはずです。そして、そのようことを現実的にやろうとする人がいたら応援したいと思いますよね。

社会をよくする活動を応援する手段として電気代を活用するのです。
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めぐるでんきではこの春から家庭用小売をスタートさせると共に、そうした地域をよりよくするプロジェクトを応援する仕組み「めぐるスイッチ」を一緒にローンチします。

初回は9つのプロジェクトが集まりましたが、子育てママの支援、古民家ツーリズム、3Dプリンタを使った次世代教育の場づくりなど、実に多種多様です。

活動を「応援したい」「参加したい」そのために自分の電気契約をめぐるでんきにスイッチする。そうすると毎月いくらかずつ活動に資金が回る。地域に活動の輪が広がる。活動する人も、応援した人もハッピーになる。応援する先に「自らやる」という選択肢も当然あるでしょう。
そのように、おもいが地域でぐるぐると"めぐる"-いわば「おもいの地産地消」をつくることは地域の事業者でしかできないし、そこに「年間の電気代が3000円安くなる」「5000円やすくなる」といった目先の価格を超越した価値があると思っています。

もちろん、それだけではエネルギーそのものの質は変わりませんから、できる限り地産電源を増やし、供給する電気の中の割合を増やしていくことを同時に行っていきます。近い将来、ブロックチェーン技術などを使って電力を紐づけて地産電気を地域で消費する体制を整えるつもりですが、まずは発電所そのものを地域で増やすことが先決です。
つまり「自然エネルギー100%社会の実現」と「多様共生型社会の実現」は車の両輪なのです。


600社近くの電力小売事業者は、今後競争市場の中で多くは淘汰されていくと思いますが、めぐるでんきは上記のようなビジョンをもって、地域の中でなくてはならない存在になること、それが結果的に会社の発展と持続可能な社会・地域の実現につながると思っています。