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2019.02.17

なぜ今自家消費なのか?【社長BLOG】

東京に自然エネルギーの森をつくる、たまエンパワー代表の山川です。今回のテーマは「なぜ今自家消費なのか?」です。

昨今世界では急速に再エネの導入が進み、日本でも2011年から固定価格買取(FIT)制度が施行、電力会社に固定価格で20年間の再エネ電気の買取を義務付けたことで太陽光発電に火が付きました。これにより、日本の太陽光発電導入量は2012年末に6.3GWから2018年末には41.5GWと6年で約7倍に急拡大しました。
日本の太陽光発電の導入量の推移2.png
太陽光発電の普及に伴って、FIT買取価格も順次引き下げられてきました。下図の通り、2011年の40円(税抜)から2019年は14円(税抜)と、7年で実に65%下がっています。
日本のFIT価格の推移2.png
これだけを見ると、事業者は収入が下がり最早ビジネスとして成り立たないように見えます。買取価格が下がると、太陽光発電は本当に終わってしまうのでしょうか?

答えはNOです。
その理由を説明しましょう。

太陽光パネルは典型的な設備産業なので、規模が拡大すればするほど、規模の経済が働いて、製造コストは下がります。
世界規模での太陽光発電の拡大により、太陽光パネル価格の価格は急速に下落、それに伴って設置コストも低下、1kWあたりの発電コストも急速に低下しています。

発電コストとは、発電設備を一定期間運用した際に、どのくらいのコストで発電できるかを示す指標で、太陽光発電は稼働を20年とみて、(設置コスト+運用コスト)÷(発電総量)で割り出されます。その中で最も大きな要素は「設置コスト」です。
世界の太陽光発電コスト(LCOE).png
FITの買取価格は経産省の価格算定委員会で前年度の設置コストの実績を勘案しながら、事業者が適正な利益が出る形で毎年価格が改訂されます。買取の原資は「賦課金」という形で国民全体から徴収されるので、上昇をできる限り抑える観点から政策的に引き下げられるという側面はあるものの、原則は、設備価格の低下→買取価格の引き下げという順序になります。

誤解されることが多いですが、太陽光発電の設置価格が継続的にかつ急速に下がっているから買取価格が引き下げられているということなのです。

FIT制度は、普及前段階において、「賦課金」という下駄を履かせて投資を促進し、普及することで価格を下げ、賦課金なしで自立できることを意図した制度ですから、その意味においては一定の成果を上げたと言えるでしょう。(もちろん功罪両面ありますが)

設置価格の低下に伴い、当然「発電コスト」も下がっています。屋根の上の太陽光発電の発電コストが電力会社から買ってくる電気よりも「安く」なれば、買うよりも作って使う方が「お得」と言えます。これが「グリッドパリティ」です。家庭用では既にグリッドパリティを実現し、電気単価の安い事業用でもグリッドパリティを実現しつつあります。

さて、一方、一般的に電気を「買っている」価格はどのように推移しているのでしょうか。

電気供給は一般家庭等の「低圧」、中大規模の「高圧」、極大規模の「特別高圧」の区分があり、それぞれ価格体系が違いますが、電気の価格は総じて横ばいから中期的に値上がり傾向にあります(下図参照)
一般家庭のモデル電気料金の推移(東京電力管内:月間).png

日本は「エネルギー資源に乏しい」とされてきたため、歴史的にエネルギー源を海外からの輸入してきた経緯があります。原発は夢の国産エネルギーと一時は言われましたが、福島以後は困難な状況にあります。2030年の電源構成比では化石燃料割合は依然56%を占めています。
日本の電源構成.png

また、常に変動する原油や天然ガスの価格は「燃料調整費」という形で毎月の電気料金で調整されています。下図を見るとわかる通り、燃料調整費(青)は、原油(オレンジ)や天然ガス(黄)の価格に合わせて、過去15年間でkWあたり+2.76円から-4.71円と7.47円の幅で上下しています。そしてこの価格は私たちがコントロールできません。高圧の電気代はkWあたり15~20円程度ですから、多くの割合のコントロール不能な要素を抱えているのが今の日本の電力事情です。
燃料費及び燃料調整費の推移_TEP2.png

さて、ここで、太陽光発電の自家消費の話に戻ります。

もうお分かりかと思いますが、太陽光発電はこうした海外の燃料に依存しない、究極の分散型エネルギーです。
その上、発電コストは低下して、既にグリッドパリティを実現しつつあること、一方、買電価格は横ばいから今後上昇傾向で燃料調整費は不安定です。

このような状況の中、屋根さえ空いていれば、もはや高くて不安定な電気に依存しなくても、あるいはFITで全量売電しなくても、屋根に設置した太陽光発電をその場で使う「自家消費」の方が、環境的にも経済的にも、そしてエネルギー安全保障的にもメリットが大きい。そんな時代に入ってきているということです。

それが、今、太陽光の自家消費が求められている理由です。

私達は「東京に自然エネルギーの森をつくる」と標榜し、日本(特に都市部)において、太陽光は最も有力なエネルギーだと確信を持って、自家消費にも早くから取り組んできましたが、ようやく本格的な自家消費の時代に入ってきたと感じています。

ただし、いざ自家消費を進めていこうとすると、技術的、制度的、社会的問題がまだ多くあり、FITほど簡単でないことは確かです。FIT中心にビジネスを行ってきた施工店や、事業者も、自家消費になかなか踏み切れない理由がそこあります。そのギャップを埋めつつ、普及を促していくことが、まさにこれからの社会に求められていることだと感じています。
そのあたりはまた追々書いていきたいと思います。

次回は「わたしたちの電気代の中身はどうなっているのか?」です。乞うご期待。